パラソムニアとは?
子供が夜中に突然起き上がり、目を開けて勝手に歩き出す。「トイレかな?」と思ってみていると、また布団に入って再び眠る・・・。子供の寝ぼけ姿はかわいいですね。
しかし、そのようなことが頻繁に起こる、または、夜中に目を覚まして起き上がった子供と会話までしているのに、朝になったら子供は「覚えていない」ということがあると、少し心配ですよね。
このように睡眠中に歩いたり、話したりするといった、好ましくない身体の動きをすることをパラソムニア(睡眠時随伴症)といいます。睡眠中に歩く、話す、の他にも、叫び声をあげたり、食べ物を食べ始めたりなどの症状もあります。
パラソムニアには、ノンレム睡眠中に起こるものとレム睡眠中に起こるものがあります。
ノンレム睡眠の時に起こるもの
ノンレム睡眠とは深い眠りのことです。脳も体も休んでいる状態です。ノンレム睡眠時におこるパラソムニアは、主に小児期の子供に多く見られます。10~15%くらいの子供に発症するといわれています。
睡眠時遊行症(夢遊病)
睡眠時遊行症とは、いわゆる夢遊病とよばれるものです。睡眠中、脳がしっかりと覚醒せずに、部分的に脳が活動して、眠ったまま体が動いてしまいます。
睡眠中に起き上がり、歩き出します。一見しっかり目が覚めているように見えますが、再び眠り、朝起きると、歩いたことは覚えていません。食べ物を食べたり、会話をしたりする場合もあるのですが、その場合もやはり、朝起きると本人は覚えていません。
ある小学生の女の子は、夜中に起き上がり、部屋の柱に向かって歩き、ぶつかって進めなくなってもそのままその場で足踏みをしていました。ちょっと笑ってしまうような話ですが、親としては心配です。
原因ははっきりしていませんが、睡眠をコントロールする脳の機能が、未発達なことが関係していると考えられています。階段から転げ落ちないように、防護柵をつけるなど、怪我をしないようにしてあげることは必要でしょう。
しかし、こういった症状のほとんどが成長するにつれ自然と消失していきます。通常は、治療は必要ではありません。あまり心配しすぎないで気長に見守ってあげましょう。
睡眠時驚愕症(夜驚症)
睡眠時驚愕症とは、夜驚症とも呼ばれ、恐怖体験をしたときのような叫び声をあげたり、泣いたりする症状です。睡眠時遊行症と同じく、朝起きると、本人はそのことを覚えていません。
乳幼児の夜鳴きによく似ているようにも思いますが、夜鳴きは睡眠の浅いレム睡眠の時に起こり、夜鳴きしても、なだめてあげるなどをすれば、それに反応してくれます。しかし、睡眠時驚愕症は、本人は深い眠りの中にいる時に起こるため、なだめるなどの行動に反応してくれません。
原因は、睡眠時遊行症と同じく、睡眠をコントロールする脳の機能の未発達が関係していることの他に、なんらかの恐怖体験やストレスを受けたことが関係しているのではないかと考えられています。恐怖体験やストレスの原因を見つけて、その原因を取り除いてあげることが大切です。
例えば、お化けが出るようなドラマを見たり、火事の現場を見てしまったり、子供が恐怖を感じることは様々あります。お化けをこわがっているのなら、寝る前に楽しい話や絵本を読んであげる、火事をこわがっているのなら、ここは安全だよというような話しかけをしてあげて安心させることで症状がよくなることがあります。
ノンレム睡眠のパラソムニアの治療について
小児のノンレム睡眠中のパラソムニアは自然と消失してしまいます。そのため、積極的な治療はしないことがほとんどです。ただし、
●症状が深刻(夜中、ドアを開けて外に出て路上を徘徊する、連日激しく泣き叫ぶ等)
●大人になっても症状が現れる
などの場合には、医療機関に一度相談してみるといいでしょう。
レム睡眠の時に起こるもの
レム睡眠とは浅い眠りのことです。体は休んでいますが、脳は活発に動いています。 脳が動いているので、レム睡眠の時によく夢をみるのです。
レム睡眠行動障害
レム睡眠行動障害とは、夢を見たときに、夢の内容にもなって、大声をだしたり、暴れて殴ったり蹴ったりするなど、攻撃的、暴力的な行動を起こします。本人は夢を見ながら無意識のうちに動いているので、起こしてあげれば行動は止まります。
子供の場合はまだいいですが、大人にこの症状がでてしまうと、一緒に就寝している子供に危害を加えてしまう可能性があり、大変危険です。このパラソムニアは大人の男性、特に中高年に多く見られます。
ノンレム睡眠中に起こるパラソムニアと同様に、原因ははっきりと特定されていません。
レム睡眠中は、体は休んでいるはずなのです。しかし、何らかの理由で筋力の活動が十分に抑制されないために、このような行動を起こしてしまうのではないかと考えられています。
この何らかの理由としては、パーキンソン病、オリーブ橋小脳萎縮症、レヴィー小体病などの神経変性疾患(脳神経疾患のひとつ)の初期症状の場合があります。
レム睡眠のパラソムニアの治療について
レム睡眠行動障害のかもしれないと思われる人は、一度医療機関を受診してみましょう。
大の大人が無意識のうちに大暴れするなんて、危ないですよね。楽観視せずに積極的に治療していきましょう。思わぬ脳の病気が見つかる可能性もあります。