なぜ睡眠障害でも精神科を受診したがらないのか?
当たり前にできていたことが当たり前で無くなる、それが病気の怖いところです。
病気に罹っていない他の人には「当たり前のことが出来ないのは甘えや怠けだ」と偏見の目で見られ、病気に対する無理解が解消されないままになってしまうことさえあります。
そういった病気への偏見と無理解が著しいのが、精神科に罹らなければならない種類の病気です。
不眠症に代表される睡眠障害も、精神科の範疇に入る病気ですが、そのために適切な治療を受けられずにいる人も少なくないのです。
「精神病院=頭がおかしい」という風潮
精神科の範疇である精神病に対しては昔から偏見と無理解が積み重なってきました。
精神病は遺伝などの生まれつきで発症する場合もあれば、周囲からのストレスなどが原因になって発症する場合もあります。
しかし、精神病は昔から「気狂い」と呼ばれ、病態や治療についてはあまり積極的に研究する人も少なく、患者は横溝正史の小説に出てくるような土蔵や座敷牢に閉じ込められて、一生を送るのが当たり前という時代がありました。
そして、その古き時代の因習を今でも引き摺っている人たちは予想以上に多くいるのです。
そのため、科学万能が叫ばれて久しい現代でも精神科への受診・通院を恥と考える人は後を絶たず、適切な治療を受けられないままになっている患者は少なくないのです。
なぜ睡眠障害は精神科の範疇なのか
睡眠障害に分類される病気は、不眠症・ナルコレプシーだけでなく、睡眠時無呼吸症候群や夜驚症・夜尿症なども含まれていて、内科・神経科・精神科などの広範囲の医科に渡っています。
そして睡眠障害の治療においては、精神科または心療内科が果たす役割は非常に大きなものになっています。
ではなぜ精神科が睡眠障害を範疇に含めているのかというと、うつ病などの精神病も睡眠障害の一種に含まれているからです。
心因性の不眠もある
子供の頃、遠足や修学旅行の前の晩は楽しみすぎて眠られなかった、という経験をしたことがある人は少なくないでしょう。それと同じように、心のありようは不眠の原因になります。
特にうつ病を患っている人は、強い不安感からの不眠や頭がボーっとした状態が続くことで起こる過眠などの睡眠障害を引き起こしやすくなります。
またいわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)で、PTSDの原因となった出来事が甦るフラッシュバック現象が起こることで、眠られなくなるケースもあります。
心療内科では手に余る精神病もある
最近は、精神科よりも開かれていて、ネガティブなイメージの無い心療内科の存在がクローズアップされています。
酷い時には精神科と精神病をこき下ろして心療内科を持ち上げようとする記事さえ見受けられます。
しかし、心療内科では精神病に対応しきれないのが現状です。
なぜなら心療内科は「内科」と謳っているように、身体の不調を外科手術以外の方法で治そうとする医科です。
その範疇は胃潰瘍に代表される精神的な原因で発症した身体の病気になっています。
つまり、身体の病気を併発しなければ精神病は心療内科で診療することが出来ないのです。
一番良いのは精神科と心療内科を併設している病院を受診することなのですが、「精神科」と付いているだけで受診に行きたがらない患者や、行かせたくない家族が居るということには変わりないのが現状なのです。
精神科を受診することは恥ずかしいことではない
このように、「精神科の受診が恥ずかしいことで家族のプライドや面子に関わるものである」という風潮が無くならない限り、睡眠障害の診断・治療のために精神科の門をたたく患者は増えて行かないことは確かです。
睡眠障害や精神病は命に関わることさえあるのにも関わらず、無理解と偏見を広めている人がいるためです。
率直に言えば命より重い恥なんてあるわけがないし、あってはならないものです。
ましてや、偏見や無理解で病人をあざ笑う真似をすることは許されるべきではありません。
だからこそ、イメージや恥を気にせずに堂々と精神科を受診すること、精神科を受けることは恥ずかしくないことを、私たちは証明していかなければならないのです。