子犬の夜泣き
引き取ったばかりの子犬は必ずと言っていいほど、夜泣きを繰り返します。
例え初日は大丈夫だったとしても、数日のうちに夜泣きは始まります。
しかし、この時期は、犬も自分の要求がどこまで通るかを恐る恐る探っており、しつけには最も大切な時期でもあります。
また、後々まで続く夜泣きの原因の多くは、この時期にあると言っても過言ではありません。
ケース1・不安、寂しさによる夜泣き
家族から離され、知らない場所で、知らない人たちの中に放り込まれる。
これは大人であっても不安を感じる状況。それが子犬なら尚更でしょう。
不安や寂しさから夜泣きを繰り返す時の特徴としては『一匹になると吠える』、『飼い主が姿を見せると泣き止む』といった場合がほとんどです。
これではお留守番もさせられません。子犬に一日でも早く新しい環境に慣れてもらいましょう。
解決方法
一匹でいる事に不安を感じているのなら、周りに人の気配をさせる事で解消できる場合があります。
以下のような方法はいかがでしょう。
- おもちゃとなるぬいぐるみを一緒に置く。
- ラジオなど音の出る物を一晩中流しておく。
- 飼い主の臭いのついたもの(靴下など)を一緒に置く
- 湯たんぽをタオルで包んで一緒に置く。
- ケージを覆い、外からの刺激(光など)を和らげる。
他には、「6・犬から見える位置に飼い主がいる」という方法も有効ですが、慣れた犬が要求吠えをする可能性もありますので、中途半端にかまうのはおすすめ出来ません。
ケース2・クレートに入れると夜泣きをする
クレートはお出かけの時も便利ですし、このクレートを寝床としている飼い主さんも多いと思われます。
『狭いクレートに犬を押し込むようで可哀想』というのは人間の勝手な思い込み。
野生の犬は、狭い巣穴の中で休息や睡眠を取っており、同じ条件を備えたクレートは犬にとっても安心できる場所のはず。
それにも関わらず、クレートに入る事を嫌がるのは、そのクレートに『嫌な思い出』があるからだと考えられます。
解決方法
まずは、なぜクレート嫌いになったのか。その原因を探らなければいけません。
例えば、寝る時や留守番させる時など、犬が一匹の時に動きを制限する目的で使用していませんか?
これを繰り返すと、犬は『クレートは寂しい場所』と学習してしまいます。
そうならない為には、飼い主がいる時でもクレートの中で過ごさせると良いでしょう。
さらにクレート中でおやつを食べさせたり、おもちゃで遊ばせることで、クレートの中は自分の安心できる場所であると認識させることが出来ます。
ケース3・構ってほしい『甘え鳴き』
夜泣きの中で最も面倒で、しつけに時間がかかるケースです。
子犬は最初、不安から夜泣きを始めます。飼い主がそばに行くと、不安は解消され夜泣きは収まる。
その為、夜泣きがする度に犬の元へ行ったり、同じ寝室で休ませるといった事を行う飼い主さんがいます。
では、このような行動を繰り返すとどうなるでしょう。
犬は『泣けば飼い主が来る』と間違った学習をしてしまいます。
その結果、夜泣きが止むことはありませんし、無視をしても今度は要求が通らない事を不満に思い吠えて抗議を始めます。
こうなっては家庭内の順位でどちらが上か分かったものではありません。
夜中に何度も起こされるので、飼い主さんの疲労とストレスも大変な物でしょう。
解決方法
方法はたった一つ。
『徹底的に無視をする』以外にありません。
犬は環境に馴染む動物です。
要求が通らなければ諦めます。ただ諦めるまでに3日かかるか、半年かかるかは分かりません。
犬と飼い主と、どちらが根負けするかの勝負になります。
ただし、住宅環境などが理由で夜泣きをさせ続ける事が出来ない事も多いでしょう。
その時は、飼い主が姿を見せて、夜泣きを止めさせるしかありません。
それでもかまい過ぎはNG。
『呼んだら来た』と思われては全ての苦労が水の泡になります。
どうしてもダメな時は、『顔に水をかける』、『大きな音をたてる』など、『吠えると嫌な事がある』と学習させる方法もあります。
しかし、この方法は現行犯でなくては意味がなく、人間との信頼関係を歪める事もありますので、注意が必要でしょう。
ケース4・空腹による夜泣き
人間の赤ちゃんと同じようにお腹がすけば夜泣きを始めます。
これを我慢しろというのはさすがに酷な話ですね。
解決方法
食事の時間をずらすだけで解決できるでしょう。
飼い主が寝る少し前に、犬に食事をとらせてみて下さい。
ただし注意点として、1日に与える量を増やすと肥満の原因になります。
イメージとしては、直前の餌の量を半分にして、時間差で2回取らせる感じです。
ケース5・トイレによる夜泣き
夜中に自由にトイレにいけない時も夜泣きは起こります。
解決方法
ケージ内にトイレがなければ準備しましょう。
また、寝床でトイレを嫌がるのであれば、飼い主が寝る前に一度犬を起こして、トイレを済ませます。
犬の年齢によりますが、これで一晩は我慢できることでしょう。
ケース6・運動不足、ストレスによる夜泣き
体力が有り余っていたり、散歩ができなくてストレスが溜まっている時にも夜泣きをする場合があります。
解決方法
日中に運動をさせて疲れさせましょう。
運動する事でストレスの発散になりますし、何より疲れていれば、夜中に起きている事もできません。
成犬の夜泣き
成犬であっても、夜泣きの理由は子犬の時のそれと大差ありません。
ただし、子犬の時よりもしつけに時間がかかる事が多いようです。
ケース7・発情による夜泣き
発情期のストレスでも夜泣きは始まります。
メスのフェロモンの範囲は約2kmと広い為、近くにヒート中の雌犬がいないからと言って安心はできません。
また勘違いされている飼い主もいるようですが、雄に発情期というものはありません。雌のフェロモンに反応しているだけです。
その為、周囲にいる雌犬も発情期が全て過ぎるまで、夜泣きが続く可能性があります。
解決方法
最も効果的なのは去勢手術を行う事でしょうが、手術に抵抗がある方も多いでしょう。
野外で飼っているのなら、一時的に室内に移す事も方法の一つではありますが、しつけのなどから見ても現実的ではありません。
これは獣医さんと相談するのがよいと思います。
老犬の夜泣き
いつまでの可愛い子犬のままではいられません。
犬も年を重ね、老化していきます。
ケース8・痴呆による夜泣き
痴呆が進むと体内時計が狂い、昼夜が逆転することが知られています。
症状としては、よくぶつかる様になったり、同じ場所を円を描くように歩き続けるような行動を取るようになれば、痴呆を疑いましょう。
解決方法
昼夜逆転を元に戻してあげるといいでしょう。
その為には、昼間になるべく遊ぶようにして、昼寝をさせないという方法があります。
また体内時計をリセットするのに日光が必要ですので、十分に日光浴をさせるのもいいでしょう。
ケース9・関節の痛みによる夜泣き
犬も人と同じように年を取ると関節が痛み始めます。特に犬の老化は後ろ足から始まると言います。
散歩に行くのを嫌がったり、足が震えるような時は関節に異常がある場合が多いようです。
解決方法
痛み止めを使う事で、痛みを散らす方法があります。
獣医さんに相談すれば、薬を処方してもらえるでしょう。
他にはコンドロイチンなどのサプリメントを取る事で、症状が改善されることもあります。
ケース10・不安による夜泣き
老犬になると、耳が遠くなったり、目が見えなくなるなど体の至る所に不調をきたし、それが不安の原因となります。
解決方法
基本的には子犬の頃と同じように、飼い主の存在を感じさせ、安心させることで夜泣きは減ります。
ただし、不安材料が自身の変化にある為、周囲の環境を変えても効果は薄と思います。
また、ここまでの年齢を重ねていれば、今更主従関係が逆転するような事も考えにくいでしょう。
夜だけ、飼い主さんのそばで寝かせてやるのも方法の一つです。
ただし相手に介護が必要な場合は、トイレもままならず、そばにいても夜泣きを繰り返す事も多いでしょう。
相当の覚悟がないと難しいかもしれません。
犬の行動には全て理由がある
人には分かり難くても、犬の行動の一つ一つには理由と原因があります。
私たちに犬の言葉は分かりませんが、鳴き声や行動から推察する事は可能です。
夜泣きがうるさいからと叱りつける前に、まずはなぜ夜泣きを繰り返すのか、その原因を知る事が大切です。