睡眠に適した環境をつくる
不眠症を解消する方法には、さまざまなものがあります。例えば「環境を睡眠に適した状態に整える」という手段は、そのうちのひとつですね。今回は、気軽に実践できる「睡眠に適した環境作り」についてお話しします。
IT機器を遠ざける
パソコンなどのモニターが発するブルーライトという光刺激は、睡眠に大きな影響を与えます。ベッドに入ってからも、これらのモバイル機器でネットサーフィンやゲームなどをしていませんか?目に差し込むこの光刺激も、不眠の原因のひとつになっているのですよ。
時間が気になって何度も確認してしまったり、ヒマだからとゲームに手を出してしまったり、SNSなどを開いてしまったりと、寝付けずにいる間もついついスマホに手を伸ばしてしまう方もいるかもしれません。しかし、それがますます眠れない時間を延長する原因になっているのです。
まずは、ベッドから手の届く場所にスマホを置くことをやめましょう。また「ベッドの中で触らなければ良い」というわけではなく、ベッドに入る直前までパソコンを触っていることも、睡眠に悪影響を与えます。
寝具選びは大切
良い睡眠をとるためには、寝具の選び方が重要です。後頭部の形に合わせた枕のオーダーメイドや、既製品でも個人に合わせてピッタリの枕を選ぶコーディネイターがいる店が登場するほど、寝具の重要性は注目されています。ただ、頭を乗せるだけの枕ではなく、首の角度を正しい状態に保つことのできる枕を選ばなければいけません。眠るときの理想的な首の角度は、床に対して5度といわれています。
下に敷くマットは「硬すぎず、柔らかすぎず」が理想です。柔らかいマットで寝ると心地良さがありますが、長時間寝ていると体が沈んでしまい、体幹に強い負担がかかってしまうのです。
とはいえ、硬すぎるマットもいけません。接地面でのみ体重を支えることとなり、関節に強い力がかかるのです。体全体を適度に支え、体の中心線を大きく曲げることなく眠れるマットを選びましょう。そのためには、床に敷いた布団よりもベッドでの睡眠をオススメします。
室温や湿度を調整する
最も快適に眠れる環境は、布団の中が温度33度前後・湿度50%前後であると言われています。この環境を保つためには、室内の温度と湿度のコントロールが不可欠です。エアコンの設定温度を、夏なら26度前後・冬なら17度前後にすると良いでしょう。乾燥しやすい冬は、これに加えて加湿気を使ったり、ぬれタオルを干しておくなどの工夫が必要になります。気をつけなければいけないことは、継続的に温度を調節する機器は、朝まで運転を続けないという点にあります。
長時間の連続使用は、温度が上がりすぎて、逆に睡眠を妨げる原因となる場合もありますし、低温やけどの危険性もあるので、使用には注意が必要です。
また、夏にクーラーで室温を下げることも、タイマーを使って数時間でオフになるように設定しなければいけません。クーラーを使わず扇風機を回して寝るという方も、必ずオフタイマーを使いましょう。
雑音を抑える
「眠れない」ということを意識しはじめると、少しの雑音がものすごく大きく聞こえることがありますね。まず、寝室の時計を音が出ないものに変えましょう。一定のリズムでチクタクと時間を刻む音は、「眠らなければ」と焦る気持ちを、ますます追い詰めてしまいます。1秒ごとに秒針がチクタクと進む時計ではなく、スムーズに秒針がスライドする時計や、音の出ないデジタル時計を選ぶと良いですね。
しかし、全くの無音状態もまた、人間を不安に陥れます。実は適度な雑音がある方が精神を安定させ、睡眠の導入に役立つということが考えられるのです。そのため耳栓や大げさなヘッドホンで徹底的に全ての音を消し去る必要はありませんが、眠りにつく際、「気になる」「耳障りだ」と感じる雑音は排除の対象となります。
音楽でリラックス
精神を安定させるヒーリングCDや音楽データが多数販売されているので、好みの曲を見つけてみましょう。しかし「癒やし系」と呼ばれる音楽の中には、イメージだけでカテゴライズされている製品もあり、注意が必要です。
例えば、癒やし系音楽の代表的なものにオルゴール曲がありますね。実は、オルゴールの音は「耳に刺さる」と表現する人もいる、刺激の強い音色なのです。
ヒーリング音楽のほかには、環境音のCDなどがオススメできます。過去、ただ暖炉が燃える様子を放送した番組が注目され話題になったことをご存じでしょうか。
さらに、人間のバイオリズムに一致する波長として有名な「f分の1ゆらぎ」という言葉をご存じでしょうか?このf分の1ゆらぎの性質を持つノイズは、ピンクノイズと呼ばれています。
明るさを調整する
「夜眠るときは暗い場所で」「朝起きたときには光を浴びる」人間はこのことにより生活のリズムを整えています。部屋の電気をつけたまま眠る人もいるようですが、これは良いことではありません。明るいままの部屋で寝ると、体が光を浴び続けていることで眠りが浅くなり、軽い睡眠障害に陥ったり、体調を崩したりします。
しかし、完全な暗闇もまた人間を不安に陥れるため、不安を和らげるための明かりは、明るすぎないよう光が直接目に入らない工夫をしましょう。
ベッドの下に間接照明を設置するといった方法があります。部屋の中の様子がわかるほどの明るさでは強すぎるので、間接照明であっても豆電球程度の弱さが良いですね。他にも、アイマスクなどを使って、目に入る光が強くなりすぎないよう工夫をしてみましょう。
寝室を睡眠専用の空間にする
寝室、もしくは独立した寝室を持たない方はベッドの上を、睡眠以外の用途に使ってはいませんか?実は、それも不眠症を引き起こす原因になっている可能性があるのです。生き物の体は条件反射によって意思とは関係なく状態変化を起こします。例えば、犬にエサを与えるときにベルの音を聞かせ続けていたら、ベルの音を聞いただけでヨダレを流すようになった、という実験「パブロフの犬」が有名ですね。
同じように、ベッドの上を睡眠にのみ使うように心がけていると、ベッドに横たわるだけでも体は「これから睡眠に入る」と反射するようになります。
体にハッキリと「ここは眠るための場所である」と認識させるため、睡眠以外の行動をとる場合には必ず寝室・ベッドの上以外の場所を選ぶように心がけましょう。また、上記「IT機器を遠ざける」の項目で触れたとおり、眠るためにベッドに入ってからスマホなどを扱うことも避けてください。
寝室のインテリアカラーは落ち着いた色に
目から入ってくる色情報には、精神を興奮させたり逆に鎮めたりといったチカラがあります。精神を興奮させたり、やる気を起こさせる・気持ちを奮い立たせる効果があるのは、主に暖色と呼ばれる色、とくに赤色が顕著ですね。また赤には、「暖色」という呼び名のとおり、体を温める効果もあります。逆に、寒色には気持ちを落ち着かせる効果があり、青系の色が最も睡眠に良い影響を与える色といわれているのです。寝室を青系のインテリアで統一してみると、不眠症の解消につながるかもしれませんね。
といっても、費用などさまざまな問題から、全ての寝具をいきなり新調するわけにもいかないと思います。
不眠症で最も問題視すべきは、眠れないと意識しすぎること、そして「不眠症の解決策が効率よくはかどらない」など深刻に考えすぎることです。