『起きていられない』睡眠障害
睡眠障害のイメージは、『必要な睡眠を取る事の出来ない不眠症』と思われがちですが、逆に『起きていられない過眠症』という症状に苦しむ人が大勢います。
自分で制御できない睡眠周期
多くの人は、夜に8時間程度のまとまった睡眠を取ると、翌日の日中に眠気を感じる事はありません。また、感じたとしてもそれは十分に我慢できる範囲のものです。
しかし、過眠症の患者は『夜に10時間以上も眠り続け、日中も耐え難い眠気に襲われる』。また『家電の電源を落としたかのように、突然眠り始める』という症状を繰り返すこともあります。
日本人に多い『眠り病:ナルコレプシー』
ギリシャ語で「ナルコ/narco」“麻痺”、「レプシー/lepsy」“発作”に由来するのが、居眠り病とも言われる『ナルコレプシー』です。
これは、日中に数十分の短い睡眠を何度も繰り返す過眠症の一種。場合によっては夜に眠れない不眠症と併発する事もあり、本人すら症状に気が付いていない事もあります。
ナルコレプシーの症状
日中の強烈な眠気は、他の過眠症と共通していますが、特徴的な物は以下の4つがあげられます。
1.睡眠発作
重要な会議や試験中、あるいは話している最中など、緊張を強いられている状態でも眠りに落ちてしまう症状。 一度の睡眠時間は5分~30分と短いのが特徴。 また、目覚めた直後は頭がすっきりとしていますが、2時間も経つ頃にはまた強烈な眠気に襲われます。
2.情動性脱力発作(カタプレキシー)
笑ったり驚いたりといった、喜怒哀楽で強く感情が動いた時に脱力する症状。
この発作自体が病気とされることもありますが、過眠症と併発するのはナルコレプシーの場合のみ。
発作の症状には個人差があり、軽い脱力感を感じる程度から、全身から力が抜けてその場に崩れ落ちるケースまで様々。
発作の時間は、長くても数分。その間、意識はしっかりしており、周りの状況を理解する事が出来ます。
しかし、中にはこの脱力症状を起こさないナルコレプシー患者も存在します。
3.金縛り
睡眠麻痺と呼ばれる症状です。
通常の睡眠時は、脳が休む「ノンレム睡眠」と体が休む「レム睡眠」が周期的に繰り返され、レム睡眠時に意識があると、金縛りを体験する事になります。
ナルコレプシー患者は、眠りが深くなってから訪れるレム睡眠が、寝入った直後のまだ眠りの浅い時に訪れます。 その為、通常の睡眠よりも意識が残りやすく、したがって多くの場合に金縛りを体験します。
4.悪夢
入眠時幻覚とも言われています。
ナルコレプシーの原因
『意識があるのに、体の自由がきかない』。この状態は、体がレム睡眠の時と同じ状態にある事を示しています。 その為、『情動性脱力発作』、『金縛り』、『悪夢』の3つの症状を合わせて、『レム睡眠関連症状』と呼ばれており、ナルコレプシーそのものが、レム睡眠とノンレム睡眠を正常に切り替えられない為に起こる病気ではないかと考えられていますが、いまだ確証はありません。
原因解明のカギは『オレキシン』
神経ペプチドの一つ『オレキシン』は食欲を抑える物質として知られている一方で、視床下部を刺激し、人の覚醒を促すことが分かっています。
根本的な原因は不明
オレキシン不足がナルコレプシーの症状を引き起こすことは分かっています。
しかし、『なぜオレキシンが不足するのか』という事は分かっていません。
遺伝が関係しているとも言われますが、ナルコレプシー患者を親に持つ一卵性双生児が二人とも発症する確率は30%。
決して低い確率ではありませんが、原因を遺伝のみと決めつけるには弱いでしょう。
ナルコレプシーの受診は精神科へ
ナルコレプシーの治療には、睡眠障害を扱っている精神科での診断を受ける事をお勧めします。
外からは居眠りをしているようにしか見えないこの病気ですが、『睡眠潜時反復検査』という眠りの状態を調べる検査には、はっきりと特徴的な動きを確認することが出来ます。
3か月以上の長期にわたり、日中の強い眠気があるのであれば、一度受診してみてはいかがでしょうか。
ナルコレプシーの治療法
軽度のナルコレプシーであれば、毎日の睡眠を決まった時間にとる事で、日中の眠気を抑制する事が出来ます。また、日中の昼寝にも効果があるとされています。
しかし、金縛りや悪夢を見る事で寝る事に恐怖を覚え、不眠症となる事も少なくありません。
その場合には、レム睡眠を減らす抗うつ薬を処方する事もあるようです。
中枢神経刺激薬
そのリタリンに変わって2007年から新たに『モディオダール』という薬が処方されることになっており、日中の眠気を軽減する事に効果が認めれられております。
治療には周囲の理解が必要不可欠
生活改善や薬の処方により、日常生活を送る事は可能です。
しかしオレキシンの異常が分からない限り、現状では感知する事は難しいでしょう。
重要な場面でも関係なく寝てしまう『ナルコレプシー』。
NPOなるこ会
日本人に多いとっても、ナルコレプシーの認知度は低いのが現状です。
多くの人は悩みを共有するどころか、病気にすら気が付かないかもしれません。
そんなナルコレプシー患者の為の組織として『日本ナルコレプシー協会(なるこ会)』が存在します。
このサイトではナルコレプシーの事や、治療を受けられる全国の病院などが紹介されています。
不安に感じる人は一度訪れてみてはいかがでしょうか。