「アルコール×風邪薬」が見せた悪夢
ある朝のこと。私は悪夢のせいで不快な目覚めを体験しました。夢の中の私は、友人が主催する展覧会へ足を運びました。せっかくだから何か買わないと・・・そう思っているところに友人が声をかけてきました。
「この2つは高くありません」私は、彼に勧められた作品を「2つとも買います!」と言ってレジに持っていきました。そして、レジで告げられた金額が・・・「2つで2万2千円です」私は、財布の中から諭吉先生2人と漱石先生2人がいなくなって青ざめました。
・・・というところで夢から覚めました。現実世界に戻ってきた後も、「2万2千円」という金額が妙にリアルだったため、夢と現実の区別がつかずにしばらくは心臓がドキドキしていました。昔オ●マバーでぼったくられたときもこのくらいの金額だったなぁ・・・そんな過去の忌まわしい記憶も蘇ってきて、私は寝汗ぐっしょりの体をもぞもぞさせました(笑)。
「あれは夢だった」とようやく冷静になったところで私は考えました。どうして悪夢を見たのか?そして、前日の夜のことを思い出しました。前日の私は体調がすぐれませんでした。風邪をひいたみたいです。そのため、私はビールを水代わりにして、市販の風邪薬を飲みました。どうやらこれがいけなかったようです。
後日、アルコールと薬の組み合わせが生命を脅かす危険性さえあることを知り、私は再び青ざめたのでした。
睡眠と健康に悪影響を及ぼす危険な組み合わせ
薬の飲み合わせや食べ合わせには、睡眠の質を落とすだけでなく、重大な健康被害をもたらすものがあります。
飲み合わせの悪い薬は「併用禁忌薬」と呼ばれます。医師が処方箋を書いて薬剤師が調剤する場合は、この「併用禁忌薬」に注意を払って医薬品を患者に提供します。そのため、患者は飲み合わせを気にせずに薬を服用できます。
一方、医師や薬剤師が関与しない市販の医薬品は、素人が何も考えずに服用するため特に危険です。市販の風邪薬や頭痛薬などには「使用上の注意」が記載された説明書が入っています。しかし、説明書をじっくり読む人はほとんどいないでしょう。そのため、悪影響のある飲み合わせが発生します。
また、特定の食品と薬との相乗効果や食品同士の食べ合わせでも注意が必要です。正しい知識を持っていないと、知らない間に体が蝕まれてしまいます。 以下では、睡眠と健康に悪影響を及ぼす危険な組み合わせを詳しく紹介します。
アルコール×薬
「お酒と薬は一緒に飲んではいけない!」とよく言われます。しかし、その理由をきちんと理解している人は少ないのではないでしょうか?
私は毎晩酒を飲まないと生きていけない(?)人間なので、風邪気味のときでも夕食時にビールを飲みます。挙句、「アルコールと風邪薬の相乗効果でぐっすり眠るぞ!」と言って、市販の風邪薬をビールで喉の奥に流し込みます。確かにぐっすり眠れます。この「ぐっすり眠れる」という状態について、改めて考えてみましょう。
アルコールも薬も肝臓で分解されるため、アルコールと薬を同時に飲むと肝臓の機能が追いつかなくなります。これによって生じる障害は次の3パターンに分かれます。
アルコールと薬の相加作用
アルコールと薬が独自に作用した結果、薬の作用・副作用が強まります。 たとえば、風邪薬や抗アレルギー薬に含まれる抗ヒスタミン薬は、くしゃみや鼻水の原因であるヒスタミンの作用を抑制します。また、中枢神経に作用して強い眠気を誘う効果もあります。この眠気は副作用と考えられる場合も多いですが、風邪気味の子どもをぐっすり眠らせたり、乗り物酔いを抑えたりするために積極的に利用されることもあります。
アルコールは抗ヒスタミン薬の眠くなる効果を強め、異様な眠気をもたらします。 私が「ぐっすり眠れる」と言っていたのは、アルコールと抗ヒスタミン薬の相加作用だったのです。他にも、薬とアルコールとの相加作用では次の症状が有名です。
・イスコチン(抗結核剤)・ピリナジン(解熱鎮痛剤)など・・・肝障害
・アスピリン(解熱鎮痛消炎剤)・・・胃腸管出血
・三環系抗うつ薬・・・昏倒・失神
・インスリン(糖尿病の治療薬)・・・低血糖
アルコール代謝の変化
薬の作用によって、アルコールが分解されにくくなります。悪酔いしたり、頭痛や嘔吐の原因になったりします。アルコール代謝の変化をもたらす薬としては、H2ブロッカー(胃腸薬)、抗生物質などがあります。
薬代謝の変化
アルコールの作用によって、薬の効果が強まったり弱まったりします。薬代謝の変化をもたらす薬としては、アレビアチン(抗てんかん剤)、セルシン(抗不安剤)、サンデミュン(免疫抑制剤など)などがあります。「アルコール×薬」の危険性を理解していただけたでしょうか?
異様に眠くなるだけならまだしも、気分が悪くなったり胃が痛くなったりしては眠れなくなります。また、ぐっすり眠るつもりが永眠してしまった、では笑えません。薬を飲んだらアルコールを避けるようにしましょう。
グレープフルーツ×薬
アルコール以外にも、薬との飲み合わせが悪い飲食物があります。これらは意外に知られていないため、私たちは気付かないうちに睡眠や健康を損なっているのかもしれません。薬との飲み合わせで注意すべき食べ物にグレープフルーツがあります。グレープフルーツは代表的な柑橘類です。ビタミンCが豊富でダイエットや美容にも良いとされるため、女の子に人気のある果物です。
グレープフルーツには天然フラボノイド成分が含まれています。この成分が肝臓や消化管粘膜に作用し、薬を代謝する酵素シトクロムP450 3A4 (CYP3A4)の働きを妨げます。薬の効果が強まったり弱まったりするとされますが、症状には個人差があります。場合によっては血圧低下や不整脈、腎機能障害なども引き起こします。
グレープフルーツとの飲み合わせで注意すべき薬は、カルシウム拮抗薬や抗精神病薬、免疫抑制剤などです。眠れないからといって、グレープフルーツを食べた後に睡眠薬を服用するのも危険です。薬を飲む場合には、グレープフルーツやその果汁が入ったジュースなどは摂取しないようにしましょう。
他にも、「納豆×抗血栓薬」「アボガド×抗うつ薬」など、身近な食べ物と薬の組み合わせにもNGなものがあります。薬を常用している人は、医師や薬剤師に相談して、食べてはいけないものをきちんと把握しておくことが大切です。
蟹×柿
食べ合わせの中にも要注意の組み合わせがあります。その代表例は「蟹×柿」です。蟹も柿も体を冷やす食べ物です。寝る前にこれら2つを一緒に食べると、寒い季節には冷え性になる可能性があります。
私の母は、秋から冬にかけて冷え性に悩まされています。手足が冷たいままだと寝付けません。そして、せっかく眠りに入っても、夜中に目覚めると手足が冷たくて再び寝付くまでに時間がかかります。歳をとると、安眠できないことがそのまま健康を損なうことにもつながります。
私の母のように冷え性がつらい人は食生活を改善するといいでしょう。 「蟹×柿」の食べ合わせに限らず、トマト、バナナ、コーヒー、白砂糖など体を冷やすとされる飲食物を就寝前に摂取しないのが一番です。
睡眠と健康を害する組み合わせを避けて安眠を
安眠を確保して健康を維持する上で、薬や食べ物の組み合わせがとても大切なことを理解していただけたでしょうか?
私の場合は、「アルコール×薬」で異様に眠くなり、質の悪い睡眠の中で悪夢を見ただけでした。しかし、昏倒したり肝障害になったりして病院に担ぎ込まれる可能性もあったわけです。もう少し注意が必要でした。皆さんも十分にご注意ください。 最後に、安眠をもたらす組み合わせを紹介しましょう。
安眠をもたらす組み合わせ
眠れないときにオススメな食べ合わせは「レタス×玉ねぎ」です。レタスに含まれるラクチュコピクリンには鎮静効果と鎮痛効果があり、中枢神経に作用して眠気をもたらします。ただし、レタスは体を冷やします。加熱調理してスープなどにするといいでしょう。
玉ねぎに含まれる硫化アリルには鎮静効果や疲労回復作用があります。また、硫化アリルは、玉ねぎに多く含まれるビタミンB1の吸収を促進します。ビタミンB1にも疲労回復作用があります。
「卵×牛乳」「生姜×ハチミツ」なども安眠に効果があるといわれます。普段の食生活に合わせて食べ合わせを工夫してみるとぐっすり眠れます。それでは皆さん、良い眠りを・・・。